輸出の減少や内需低迷が長期化している

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為替のウォン高で輸出が減少し内需も低迷、製造業の景況指数も落ち込みが止まらない。四面楚歌状態の韓国経済について、米国をリーマン・ショック後のどん底から救ったベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)前議長がメスを入れた。

当局が不透明な為替介入を繰り返す通貨制度について「完全な変動相場制ではない」と指摘、輸出に依存する経済構造についても「限界がある」と苦言を呈したのだ。

「製造業の輸出中心の経済では韓国経済の規模を維持することは難しくなっている」

韓国メディアによると、5月27日、ソウルを訪問して金融フォーラムに参加したバーナンキ氏はこう述べて、韓国経済の問題点を指摘した。

バーナンキ氏は学者出身で、2006年から14年までFRB議長を務め、ゼロ金利政策や3回にわたる量的金融緩和政策を実施し、リーマン・ショック後の米国経済を立て直した。

米国に続いて日本や欧州が量的緩和政策を実施、通貨の供給量が増えることで結果的に通貨安となり、ウォンは独歩高の状態となった。

製造業の輸出依存度が高い韓国だが、サムスン電子や現代自動車など主要企業が減益に見舞われた。輸出額は今年1月に前年同月比0・9%減だったのが、月を追うごとに減少幅が拡大。5カ月連続減となった5月はついに同10・9%減となった。

輸入の減少幅が輸出よりもさらに落ち込んでいるため貿易収支は黒字だが、「不況型黒字」の状況は鮮明だ。

バーナンキ氏はこうした状況を見透かすかのように、「輸出志向の経済だけでは十分な雇用を生み出すことも難しく、世界経済の変動性にも影響を受けやすい。内需を振興させ、経済を多様化しなければならない」と警鐘を鳴らした。

またネットメディアの韓経ドットコムによると、バーナンキ氏は為替制度についても「日本や欧州などは変動為替制度だが、韓国、中国などは管理された為替レート政策を実施している」と言及した。

中国は当局が為替の変動幅を定める「管理フロート制」を導入、事実上、共産党政権の意向で大きく左右される。一方、韓国は1997年の通貨危機以降、正式に変動相場制を導入し、市場に為替レートを委ねているはずなのだが、実態は大きく異なる。バーナンキ氏は「完全な変動為替制度とは少し違ったもの」と評した。

財務省は4月に議会に提出した報告書で、韓国が不透明な為替介入を繰り返していると批判国際通貨基金(IMF)も「通貨を実態より安く誘導している」としているが、バーナンキ氏も同様の見方をしていることが分かった。

しかも皮肉なことに、そうした介入も効果は一時的で、かつての米国、そして現在の日本や欧州の量的緩和の大波を受けてウォン高に押し戻されているのが現状だ。

嘉悦大教授の高橋洋一氏は「日本や欧州のように量的緩和をしないと韓国経済の浮上はあり得ないが、当局は限定的な利下げにとどまっている。韓国の対外債務は短期のものが多く、ウォンが安くなると外資が韓国から引き揚げやすくなるためだ」と分析する。

日本がリーマン・ショック後に超円高になっていた際にウォン安を武器に輸出産業を急成長させた韓国だが、ウォン高に転じると急激に失速した。英金融大手HSBCが発表した5月の韓国製造業の購買担当者指数(PMI)は47・8と、景況感の分かれ目となる50を大きく下回り、2013年8月以来の落ち込みとなった。

前出の高橋氏は

「米国の量的緩和はようやく出口を迎えているが、日欧は緩和の最中であるため、韓国が少しぐらい利下げしてもウォン安にはならない。その結果、輸出が伸びずに韓国経済は低迷している。円安で、日本の自動車・家電業界は復活しているが、その一方、韓国の自動車・家電は不振に陥っている」と指摘する。

バーナンキ氏が提言するように、輸出依存から内需とのバランスのとれた経済構造に移行できるのか。韓国経済は剣が峰に立たされている。