韓国で爆発的感染が心配される中東呼吸器症候群(MERS)の拡大は人災か? 韓国政府集計の隔離対象者は2000人を超えた。しかし政府主導による隔離対象者の管理があまりにでたらめで、そのお粗末さが次々と明らかになってきている。

ソウル市のサムスンソウル病院は7日、記者会見を開き、MERSの感染者を処置した院内の施設を出入りした患者や医療スタッフら計約890人を隔離対象とし、追跡調査していると明らかにした。同病院での感染者は医師2人を含む計17人に上っている。

保健福祉省は7日、韓国での感染者が新たに14人確認され、うち末期の胃がんだった男性(75)が5日に死亡したと発表。感染者は8日、死者5人を含む計87人となった。新たな14人のうち10人はサムスンソウル病院での3次感染者。

また韓国政府は7日、同病院や既に明らかにしていたソウル南方の平沢聖母病院を含め、感染者らが訪れた24の病院名を公表。「混乱を招く」として伏せてきた方針を転換した。

しかし遅れて公表したうえ、病院名と所在地の一部に間違いがあったのだ。韓国事情通は「所在地にない病院名があったので、韓国ネット上では『政府がMERS怪文書を流し、国民の不安をあおっている』などと大騒ぎです。誰も政府を信じていません」と指摘する。

会見したサムスンソウル病院の院長によると、韓国初の患者(68)から感染した男性(35)が転院してきた際、病院側はMERSの疑いがあることを把握しないまま応急処置室で治療した。その間、この男性は他の患者675人、医療スタッフら218人と接触した可能性がある。

院内で感染した医師(38)が5月30日に高熱を発しながら地域の集会に出席、不特定多数と接触したことも判明するなど、ソウルで感染が拡大する恐れが出ている。ソウル市は7日、同病院がある江南区などの約120の幼稚園と小学校に対し、8日から3日間の休園・休校を命じた。

韓国メディアはこぞって「隔離対象者の管理がでたらめだ」と報じている。韓国紙「ハンギョレ」が報じたのは、2日に隔離対象として自宅謹慎となった会社員のケースだ。保健所は「外出を慎んで、誰とも接触しないこと。翌日、訪問して検査します」と告げた。翌日、保健所職員は会社員宅には入らず、家の前に体温計とマスクを置き、電話で「毎日、体温を測って、知らせてください」。

しかし体温計には電池が入っておらず、会社員が保健所に電話しても、電話が殺到しているためつながらなかった。会社員は「近くのコンビニに電池を買いに行った。政府は感染防止の考え方が間違っている」と電話取材に答えている。

それにしても「ヒト―ヒト感染」しにくく、手指のアルコール消毒などで大部分は防ぐことができるはずのMERSがなぜこれほど広まっているのか。しかも適切な処置を受けることができるはずの病院での院内感染が多い。

先の韓国事情通は「韓国の病院では看護師ではなく、家族が看病するんです。大病院であっても『家族や友人など保護者が最低1人はずっと看病しなければなりません』というシステムで、看護師は別料金で高額です。MERS患者の身の回りの世話を、医学的知識のない家族がするから、院内感染してしまうのでしょう」と語る。



なお、朴槿恵大統領(63)は4月のセウォル号1周忌記念式典の日に南米歴訪に出掛け、抗議集会が暴動に発展した。MERS感染が収まるメドは立っていないが、14日から訪米のスケジュールが入っている。もしMERSを放置し訪米すれば、韓国内はとんでもないカオスになりそうだ。