日本よ、侍国家たれ。

日本は「サムライ国家」としての意気を示し、いわれなき批判を仕掛けてくる不届き国家に対し、断固反論しなければならない。

●日本の衰退がアジアに混乱をもたらす

http://diamond.jp/articles/-/83509

 

大統領の指針ともなる最高情報機関・米国国家会議(NIC)。CIA、国防総省国土安全保障省――米国16の情報機関のデータを統括するNICトップ分析官が辞任後、初めて著した全米話題作『シフト 2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』が11月20日に発売された。日本でも発売早々に増刷が決定、反響を呼んでいる。

本連載では、NIC在任中には明かせなかった政治・経済・軍事・テクノロジーなど多岐に渡る分析のなかから、そのエッセンスを紹介する。



第11回では、今後数十年にわたるアジアの地域秩序の行方がテーマだ。現在もなお、アジアは前世紀の戦争の歴史がもたらす対立から自由ではない。今まではアメリカが安全保障の要となってきたが、今後アジアはEUのような地域秩序を自らの手で築くことができるのだろうか。

 


● 中国の経済成長が止まったとき アジアで紛争が起こる?

東アジアでは、急激な経済成長、劇的なパワーシフト、愛国主義の高まり、そして猛烈な軍備近代化(中国だけでなくインドもやっている)により、新興国と日本の間で緊張と競争が増している。

アジアでは第2次世界大戦の戦後処理が異例の形を取ったことと、それゆえに朝鮮半島台湾海峡で対立が続いたため、歴史的な不満が徐々に拡大してきた。中国の勢力拡大に対する不安、地域全体における愛国主義的機運の高まり、そしてアメリカがアジアから撤退するのではないかという不安は、今後数十年にわたり東アジアの緊張の種になるだろう。

日中関係、日韓関係、中韓関係、中印関係、そして中越関係のこじれが示すように、アジアでは経済成長と相互依存が歴史的な不満を緩和する方向には働かなかった。このため東アジア諸国は、経済的には中国に、安全保障ではアメリカと中国以外の国々へと、二つの方向に引っ張られるだろう。

1995年以降、日本、韓国、オーストラリア、インドなどのアジアの大国は、通商面ではアメリカから離れて中国に接近する一方で、安全保障面ではアメリカとの関係を強化する「保険」戦略をとってきた。

このパターンは当面続くだろう。しかし中国で法治主義が拡大し、近代化された軍備の透明性が高まるなど政治の自由化が進めば、東アジア全体の安全保障上の懸念は縮小し、念のためアメリカに頼る必要性は低下する。

中国の経済成長が続き、イノベーション内需主導型の経済に転換すれば、東アジアはますます世界の貿易と投資の中心になるだろう。これに対して、中国経済が深刻または長期的な危機に見舞われた場合、地域全体への影響力は低下し、地域が不安定するおそれがある。

 

 

● 「撤退するアメリカ」が アジアを紛争地にする

世界経済の中心がアジアにシフトするにつれて、インド洋と太平洋が21世紀の国際水路の要になる。そこで中国の外洋海軍が強化されれば、アメリカの海の覇権は薄れるだろう。だとすれば、公海に目を光らせ、航行の自由を守る海洋同盟を構築する大国はどこになるのか。

これから数十年間のアジアの秩序については、私は四つのシナリオがありうると思う。

(1) 現在と同じで、ルールに基づく協力と、アメリカと中国の静かな競争(ほとんどのアジア諸国はどちらにもつかず中間にいる)が続く。

……アメリカの優位を基礎とする同盟が安全保障秩序を維持し、中国の軍備増強、北朝鮮の核開発といった潜在的な問題の影響は薄れる。地域機構が成長し、経済統合はアジアだけでなく環太平洋ベースで進む。小規模な軍事的事故がエスカレートして、大衆の熱狂的な愛国主義に火がつけば、紛争に発展するおそれがある。

(2) 激しい勢力争いを伴う勢力均衡秩序が形成される。ダイナミックなパワーシフトと、アメリカの役割縮小が勢力争いを激化させる。

……アメリカが孤立主義を取るか、経済的に衰退して、東アジア諸国は、もはやアメリカは東アジアの安全保障維持に関心がないと考えるようになる。こうした地域秩序は「いがみ合いには絶好の環境だ」。アメリカの不在を補うために、核開発または核獲得に乗り出す国も出てくる。これは最悪のシナリオであり、東アジアは現在の中東よりも大規模な地域紛争に向かうだろう。東アジア諸国は中東諸国よりも経済的・技術的に豊かだから戦争はより壮絶なものになる。

 

 

● 日本の衰退と、 中国による「アジア共同体」の形成

(3) ヨーロッパのように、民主的に平和を維持する地域秩序が構築される。ただしこれは中国の政治的自由化が前提条件となる。

……この東アジア共同体ともいうべき地域秩序は、小国の自治を尊重する。多元的で平和を愛する東アジア共同体は、安全保障の要としてアメリカの助けを必要とする。現在、強い中国への不安が高まっていることを考えると、これは最も現実味の乏しいシナリオだ。

(4) 中国が頂点に立つ中国中心の地域秩序が構築される。1990年代以降、アジアは開放的な環太平洋地域機構の構築を目指してきたが、これはあくまでアジアのなかにこもる閉鎖的な地域機構になる。

……このシナリオは、中国が好戦的な姿勢を改め、近隣諸国と次々に2国間関係を築くことが前提になる。

インドが台頭するか、日本の相対的衰退が止まらなければ、中国中心の秩序が生まれる可能性は高まる。アジアの中核的パートナー諸国に中国に対抗する能力や意志がなければ、アメリカが関与しなければならないかもしれない。それは中国との直接対決の危険性をはらんでいる。

アメリカがアジアにコミットするかどうかは不透明だが、それを別にすれば、アジアにとって最大の不確定要因は、中国自身の弱点がどのように発展するかだ。たとえ中所得国の罠にはまり、先進国経済に脱皮できなかったとしても、中国はアジアでトップクラスの国であり続けるだろう。

しかしその影響力は低下する。そうなれば中国指導部は、大衆の目を国内の問題からそらすために対外的に攻撃的な姿勢を強めるおそれがある。中国が近隣国かアメリカと戦って敗れた場合も、中国政府は面目を失うことになる。他方、勝利すれば、中国中心秩序が構築される可能性が高まるだろう。



マシュー・バロウズ(Mathew Burrows)
米国の最高情報機関であるNIC(国家情報会議)の元分析・報告部部長。直近の2号である『グローバルトレンド』(2025/2030)で主筆を担当。ウェズリアン大学(学士号)とケンブリッジ大学(博士号)で歴史学を学ぶ。1986年にCIA入局。2003年にNICに加わる。28年に渡って国家情報アナリストとして活躍。リチャード・ホルブルック国連大使の情報顧問を務めたこともある。2013年に辞任し、現在は「アトランティック・カウンシル」戦略フォーサイト・イニシアチブ部長を務める。ワシントン在住。

 

 

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