日本よ、侍国家たれ。

日本は「サムライ国家」としての意気を示し、いわれなき批判を仕掛けてくる不届き国家に対し、断固反論しなければならない。

●台湾は親日、中国は反日。わかりやすい。

 

 

だから台湾人は中国人と間違えられたくない

ニューズウィーク日本版 2月9日(火)16時25分配信

 

旧正月(春節)が始まった。中国人の"民族大移動"は例年通りだが、実際に日本へ押し寄せる中国人観光客が「爆買い」する姿を目にすると、やはりその熱気に圧倒される。

しばらく前の話になるが、来日した「台湾人」観光客が、日本では中国人と間違えられないよう、無言で静かに観光しているというニュースを見た。同じ中華民族とはいえ、教養とマナーを重んじる台湾の人々が、傍若無人なふるまいや大声で話す大陸育ちの中国人と一線を画したいと願う気持ちが伝わってきて、心が痛んだ。



だが、台湾の人々が無言を決め込む相手は、一部のマナー知らずの中国人だけではないだろう。彼らの背景に透かして見える、もっと横暴な中国の国家体質をつい連想してしまうからではないだろうか。

日本では報道される機会は少ないが、実は、中国ビジネスに携わる台湾の企業家たちが中国で理不尽な扱いを受けたり、会社を乗っ取られたりするケースが頻発している。

カナダの中国語ケーブルテレビ局「新唐人」(2015年7月3日放送)によれば、中国の湖南省でビジネスを展開して15年になる台湾の企業家が、脱税容疑で逮捕されて取り調べもないまま、現在も中国で軟禁されているという。企業家の妻は、「中国の株主がコネを利用して衡陽県公安局に通報し、会社の帳簿を渡しました。そのあと私服警官がやって来て、逮捕状もなく夫を連行しました」と涙ながらに訴える。

トラブルの発端は、合弁のパートナーである中国企業が、台湾の企業家が所有する6割の株を奪おうとしたことだった。企業家は4月に台湾に戻って、台湾政府の対中交渉の窓口機関である「海峡交流基金会」に訴えた。

すると間もなく中国側パートナーが話し合いを申し入れてきたため、中国へ行くと、複数の警官が会社にやって来て連行された。37日間勾留された末にようやく証拠不十分で釈放されたが、今も中国側パートナーが牛耳る工場に軟禁されたままだという。「海峡交流基金会」が中国政府に抗議したが、返答はないままだ。

こんな事例もある。14年前から四川省綿陽市の経済技術開発区に工場を開設し、総額5億台湾ドル(約19億円)を投じて順調に経営していた台湾の企業家が、2013年に突然、市当局から合弁契約の無効を宣言された。現地の司法機関に訴えたが認められず、国外退去になったという(同、2015年2月10日放送)。

政府と警察、合弁パートナーが結託して逮捕・拘禁

こうしたトラブルは、絶え間なく発生してきた。

振り返れば、1979年、当時の最高実力者・鄧小平が「経済改革・開放政策」を打ち出して以来、中国は世界各国へ向けて対中投資を呼びかけ、積極的に外資導入に力を注いできた。90年代に入って経済成長が軌道に乗ると、台湾へもラブコールを送るようになった。1997年の「香港返還」でイギリスから香港を取り戻し、アヘン戦争以来の「百年の大計」を達成したことで、次の目標を台湾へと見定めたからだろう。

中国と台湾の雪解けとなったのは、2008年5月、台湾で国民党の馬英九が総統選挙に勝って政権を獲得し、中台関係の改善に乗り出したときだ。馬英九が、李登輝政権時代から15年間奮闘してきた国連加盟を目指す運動をやめ、陳水扁前政権が拒否した中国のパンダ受け入れにも応じたため、台湾では一躍パンダブームが起こり、中国への関心と親しみを感じるようになった。

中国では、国務院台湾事務弁公室に「政党部」を新設して対話姿勢を打ち出し、1949年以来断絶していた国民党と共産党のトップ会談が実現した。今後は年2回のペースで定期的にトップ会談をするということも決定。

トップ会談から7か月後の2008年12月には中台間に定期直航便が就航し、中国大陸から初めて台湾に観光客が訪れた。文化、芸術、メディア、その他各分野で幅広い交流が開始され、中国企業の台湾投資、台湾企業の中国投資も始まって、中台交流は怒涛の勢いで広がった。

だが、世界中の大企業が鳴り物入りで対中投資に邁進する華やかな舞台の陰で、台湾企業に対する中国の対応は驚くべきものだった。

当初は歓迎ムードの中で、中国は合弁事業を盛んに推奨し、台湾企業に対する税制の優遇措置や各種法的手続きの簡素化を約束した。台湾企業も中国進出にあたり、中国語が通じる相手との合弁事業は意思疎通の面でも問題なさそうだと判断した。やがて台湾の中小企業の企業家たちが福建省広東省を中心に、中台合弁事業、次いで台湾の独資(全額投資)事業を次々に立ち上げた。

だが、合弁企業が操業を開始してようやく利益を上げるようになると、状況は一変した。ある日突然、地元の警察がやって来て、脱税や各種違法行為などを口実に、台湾の企業家を逮捕・拘禁。そして合弁パートナーである中国企業に所有権を移すようサインを強要したのである。サインしなければ何か月でも勾留すると恫喝され、サインをすれば会社を失って国外退去にされるのだ。

地方政府と公安警察、合弁パートナーである中国企業が結託しているために、対抗手段はなかった。都会では少なかったが、物価が安い地方都市や閉鎖的な農村部に進出した中小企業の経営者に、こうした災難に遭う人が多かったようだ。一説によると、当初の10年間に拘束された台湾の企業家は150人を下らないとも言われている。

2010年6月に「両岸経済協力枠組協議(ECFA)」が締結されたことで、こうした不法行為はなくなると期待されたが、台湾の企業家たちの被害は一向に減らなかった。前出の「新唐人」(2011年10月2日放送)によれば、ECFA締結の後、被害を受けた台湾の企業家25人が合同で台湾立法院に陳情書を提出して支援を求めた。

抗議デモも2度行い、3度目の抗議デモを準備していたとき、台湾へ商用で訪れた中国の官僚からデモを取り消すよう脅迫電話を受けた。台湾の対中交渉窓口のひとつである「大陸委員会」が中国政府に異議を申し立て、「わが国では集会やデモは法律で保障され、憲法で定められた国民の権利です。政府は国民の集会の自由と権利を尊重します」と、懸念を表明した。

こうした被害が次々に発覚して台湾メディアで取り上げられるようになると、台湾世論から反発の声が上がり、中国への好感ムードが一気に冷めていったのだ。



それでも経済交流は進んだ。中国に対する警戒感をぬぐえないまま、今や台湾の輸出額の約4割は中国向けで占められ、中国へ進出した台湾企業は10万社にのぼっている。中国在住の台湾出身者も福建、広東、上海などを中心に100万人に達し、毎年の中台往来者総数は500万人規模にまでふくれあがっている。


中国政府は身内である「中国人」を最も冷遇する

それにしても、なぜ中国はこれほど「台湾人」に対して理不尽な扱いをするのか。

その疑問を解くカギがある。実は、中国には「中国人の区分」があるのだ。

「中国人」――中国国内に住む人
「同胞」――香港、台湾在住の人
「華僑」――海外在住で中国籍を所持する人
華人」――海外在住で外国籍を所持する中国系の人

この区分は出入国管理上の便宜的な区分なのだが、それ以上に重要なのは、ひとたび政治的な問題が持ち上がると、処遇の優劣や処罰の程度に大きな格差が生まれる点にある。

通常の国であれば、政府は自国民に対して手厚い保護を与えるものだが、中国の場合はまったく逆である。つまり身内である「中国人」が最も冷遇され、台湾と香港の「同胞」は「中国人」と兄弟同然の近しい間柄として、身内に準じて冷遇される。台湾の企業家たちが中国で頻発する企業の乗っ取り事件に遭遇しやすいのは、このためだ。「華僑」や「華人」は海外に住んでいる親戚か遠縁にあたる関係とみなされ、一応の配慮を受けることが多いし、「外国人」ならお客様として丁重に扱われる、というわけだ。

こうした区分があるゆえに、「中国人」は海外へ出て、「同胞」から「華僑」、「華人」へと身分を変えて身の安全を図ろうとする。外国籍を取得して「華人」となり、他国の保護を得られるパスポートを所持して中国へ戻れば、安心してビジネスに専念できると考えるからだ。

もっとも、2014年11月に中国で「反スパイ法」が発足して以来、日本人を含めた多くの外国人が容赦なく逮捕・拘禁されるようになった。これまでのように国外退去処分では済まされず、中国国内の刑罰を受ける可能性が高くなった。今や経済成長を果たした中国が、政権維持と権力強化を目指して、地球規模で威力を増大しているということなのか。

台湾では、先月実施された総統選挙で、台湾の「自由」と「民主」を政策に盛り込んだ民進党が圧勝した。若い世代を中心に「台湾人」意識が盛り上がり、民進党に新たな未来を託した証である。それはまた、時々刻々と迫りくる中国政府の脅威に戸惑い、恐れつつも、反発する強い心の現れでもあるはずだ。今後、中国の脅威がさらに強まれば、きっと「台湾人」意識は一層強固なものになっていくにちがいない。

春節の季節に、日本の観光地を無言で静かに歩いているアジア人を見かけたら、台湾からの観光客かもしれない。先日発生した台湾南部地震の被害も深刻だ。政治も地震も両方の意味で、「応援していますよ!」と、日本語で声をかけてみるのも良さそうだ。


[執筆者]


譚璐美(タン・ロミ)
作家、慶應義塾大学文学部訪問教授。東京生まれ慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション!――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。

譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)

 

 

広告を非表示にする