沖縄県の安慶田(あげだ)光男・元副知事の働きかけを告発した前教育長が「恫喝(どうかつ)された」と証言したことは安慶田氏の専横ぶりを象徴する。

県職員に対する恫喝は日常茶飯事で、辟易(へきえき)した職員は距離を置き、政策も安慶田氏に意のままに操らせる悪循環を招いた。「翁長雄志(おなが・たけし)知事が見て見ぬふりで虎の威を借る狐(きつね)に増長させた」と指摘する幹部もおり、翁長氏の責任も重い。

「また怒鳴られた」。翁長県政の発足から2年余りで、職員からは同じ言葉が何度もつぶやかれていた。「狐に門前払いされた」と話す職員も少なくない。翁長氏との調整前に安慶田氏に突き返されたことを意味する。

門前払いの代表はパイロット訓練が激減した下地島空港宮古島市)の利活用事業だ。政敵の市長を利することは認めないと事業は停止状態に置かれた。

安慶田氏は行政上必要とされる日程よりも政治的な日程を優先。職員が台風被災地の三役視察を求めようものなら怒鳴られるのがオチ。進言しないため災害復旧は常に後手に回った。

威を借る虎は翁長氏だけではなかった。安慶田氏はある市の幹部に「長官とメールのやりとりをしているんだぞ」と携帯電話を見せ、菅義偉官房長官との交渉役であることを誇示した。那覇と名護を除く9市長が「反翁長県政」を貫くのは、こうした安慶田氏の態度に嫌悪感を抱いていることが大きく働いている。

安慶田氏の口利き疑惑は18日に沖縄タイムスが報じ、琉球新報も追随した。この地元2紙は米軍普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止で翁長県政と共闘関係にあり、普段は県政擁護の記事ばかりだが、今回は不正を追及する姿勢に徹している。

県政与党である革新政党の一部と安慶田氏の間には隙間風が吹いている。安慶田氏が辺野古移設阻止で埋め立て承認取り消しに続く対抗策を打ち出さないのは、菅氏との裏取引があるからだという不信感があるためだ。

県議の一人は「今回の疑惑は氷山の一角」と指摘している。徹底的に究明されれば、任命権者の翁長氏の進退問題にも直結しかねない。県政与党側に翁長氏の後継は見当たらず、辺野古移設阻止に向けた勢いもさらに弱まることになる。

それでもなお地元紙は疑惑を徹底追及するのか。安慶田氏の退場で翁長氏の支持基盤はどう変容するのか。そこが注目される。(半沢尚久)