「新唐人TV」youtube画像より

 

予兆

中国語に「禍不単行(災いは重なって来る)」という成語がある。これを日本語で表すと、「泣き面に蜂」、「弱り目に祟り目」、「踏んだり蹴ったり」といったことわざになる。ドイツ語にも“ein Unglück kommt selten allein(災難は滅多に1つでは来ない)”ということわざがあるというから、これは世界に共通する公理なのかもしれない。

ところで、2020年1月28日、中国のインターネット上には、湖北省の宜昌市、荊州市、漢川市、さらには河南省の焦作市などで無数の「烏鴉(カラス)」が上空を飛び回り、「カァー、カァー」とけたたましく鳴き騒ぎ、それがいつの間にか大きな群れとなって空を覆う様子を撮影した動画が多数投稿された。

「新唐人TV」youtube画像より

あるネットユーザーはその前日の1月27日に河南省濮陽市でカラスの大群が黒一色に上空を覆い尽くすのを見たとネットの掲示板に書き込んだし、天津市のネットユーザーも1月27日に天津市の上空でカラスの黒い大群が乱舞する現象を見たと同じ掲示板に書き込んだ。

これに応じたあるネットユーザーは、1ヵ月以上前に北京市海淀区でも少なくとも数千羽のカラスが頭上を飛び回るのを見たと掲示板に書き込んだ。

カラスの大群が湖北省の各地で飛び回ることに着目したネットユーザーは、カラスが集まるのは死臭を嗅ぎ付けるからという昔からの言い伝えを踏まえて、湖北省の各地でカラスが群れて大きな集団を作るのは新型コロナウイルスに感染して武漢肺炎を発症した人が多数死亡しているからではないのかと疑問を呈した。

また、あるネットユーザーは、カラスが大群を作って飛び回るのは不吉の象徴であり、猖獗を極める武漢肺炎以外に何か他の困難が中国を襲う前兆ではないかと危惧を示したのだった。 

2012年11月15日に開催された中国共産党第18期中央委員会第1回会議で総書記に選出された習近平は、1期5年の任期中に権力を固め、2期目である現在は習近平政権の独裁体制を確立している。

その習近平体制に大きな影響を及ぼしかねないのが、中国が直面している4つの国難である。4つの国難とは何を指すのか。

 

国難その1・アフリカ豚熱の蔓延

日本の農林水産省は2019年12月24日付で日本国内での感染が確認されている「豚コレラ(CSF:Classical swine fever)」の名称を「豚熱(CSF)」に変更すると発表し、同時に中国や韓国で感染が広がる「アフリカ豚コレラ(ASF: African swine fever)」の名称を「アフリカ豚熱(ASF)」に変更すると発表した。

従って、以下では「アフリカ豚コレラ」を「アフリカ豚熱」と呼ぶ。

2020年1月8日に記者会見を行った中国政府「農業農村部」副部長の于康震は中国国内で蔓延するアフリカ豚熱について以下のように述べた。

(1)2018年8月3日に遼寧省瀋陽市の養豚場で最初の感染が確認されたアフリカ豚熱は今までに全国で162件の発生が報告され、合計で120万頭の豚が感染を理由に殺処分された。

(2)2019年の通年では、全国で63件のアフリカ豚熱の発生が報告され、合計39万頭の豚が殺処分された。4月を除いた11カ月の発生件数は一桁を維持した。

(3)目下、全国の一級行政区(省・自治区直轄市)では雲南省でアフリカ豚熱が1件発生したためにアフリカ豚熱による封鎖は解除されていないが、残る30の一級行政区では封鎖が解除されている。

この通り、2018年8月3日に遼寧省で最初の感染が確認されたアフリカ豚熱は急速に感染領域を拡大し、9ヵ月後の2019年4月19日には最後に残されていた海南省で感染が確認されたことにより、アフリカ豚熱の感染が中国全土を覆うことになった。

世界の豚肉生産量と豚肉消費量は共に約1億1000万トン前後であり、中国の豚肉生産量と豚肉消費量は共に約5500万トンで、それぞれ世界の50%を占めている

一方、豚肉の貿易量は年間約800万トン強で、欧州連合(EU)、米国、カナダの3者で輸出量の85%前後を占め、中国向けに豚肉を追加で輸出する余力はないのが実情である。

中国におけるアフリカ豚熱の蔓延は、豚肉生産量を低下させて価格の高騰を招き、消費者の一時的な豚肉離れを引き起こすと同時に、豚肉への強い食欲を掻き立てられるという相反する作用を招来している。

 豚肉の供給不足に対する不満の矛先が中国政府に向けられるのは必然の結果である。「食い物の恨みは恐ろしい」と言うが、豚肉不足は中国政府にとって物理的に解決が困難な国難と言えるのである。

国難その2・新型コロナウイルスによる武漢肺炎

2020年2月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの名称を従来使われて来た「2019-nCoV」から「SARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」に変更すると同時に、SARS-CoV-2に感染することで発症する新型コロナウイルス感染症(通称「武漢肺炎」)の正式名称を「COVID-19」に決定したと発表した。

しかし、このような無味乾燥なコードネームを命名したWHOの魂胆は、武漢という地名を隠蔽しようとする中国寄りの対応以外の何物でもないので、筆者は敢えて「新型コロナウイルス」と「武漢肺炎」という名称を今後も使用する。

2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した武漢肺炎は中国政府による初動対応の遅延と情報統制によって、中国国内だけでなく全世界に感染を拡大している。

本稿を執筆している3月15日午前2時までのAFP(フランス通信社)の統計によれば、新型コロナウイルスの感染者は世界137の国・地域で15万1760人に達し、このうちの死者は5764人であった。

新型コロナウイルスの発生源である中国本土の感染者は8万824人で、このうちの死者は3189人であり、6万5541人が回復したとされる。また、3月13日から14日までに新たに発生した感染者は11人であり、死者は13人であったという。

中国以外では同じ13日から14日までの間に感染者は1万1026人増えて7万943人となり、死者は404人増えて2575人になった。

習近平国家主席として3月12日に新型コロナウイルス震源地である武漢市を感染拡大後初めて訪問した。

同日には武漢市で新型コロナウイルスに感染して武漢肺炎を発症した1万人規模の患者たちを収容していた合計14カ所の仮設病院が閉鎖され、収容されていた患者の大部分が快癒したと報じられた。

習近平は仮設病院の閉鎖を根拠として、中国が新型コロナウイルスの封じ込めに成功したとその勝利を世界へ宣言したが、仮設病院に収容されていた患者たちは全快しないまま強制的に帰宅させられたのが実態である。

中国国内では武漢肺炎の死者数が統制管理されており、一定以上の死者数は死因を別名目にして報告しているようなので、中国政府による公式発表であっても信用に足るものではない。

 新型コロナウイルスによって発症する武漢肺炎は、中国にとって最大級の国難であり、習近平政権はこの扱いを誤ると、国家としての信用を失うのみならず、習近平は自身が拠って立つ基盤を失いかねない。

国難その3・害虫の蛾「ツマジロクサヨトウ」の来襲

ツマジロクサヨトウ(学名:Spodoptera frugiperda)は中国名を「草地貪夜蛾」あるいは「秋行軍蟲(英名:Fall Armyworm)」と言う害虫の蛾である。

中国を襲うツマジロクサヨトウについては、2019年5月31日付の記事「米国産食糧輸入制限と突っ張っても、実は食糧調達に困る中国」で報じているので参照願いたい。

ツマジロクサヨトウはアメリカ大陸の熱帯や亜熱帯地域を起源とする害虫で、繁殖が速く、拡大距離が広く、根絶が難しく、幼虫が農業に及ぼす損失が甚大で、各種の農作物に深刻な被害をもたらすという。

2019年5月時点ですでに中国の雲南省に侵入していたツマジロクサヨトウは、広西チワン族自治区広東省貴州省湖南省海南省で勢力を拡大し、農作物に多大な被害をもたらしたのだった。

2020年2月20日付で中国政府・農業農村部は『2020年ツマジロクサヨトウ水際作戦対応マニュアル』を発行して、全国の農民にツマグロクサヨトウに関して警鐘を鳴らした。

それによれば、2020年2月10日までに雲南省四川省などの地区でツマグロクサヨトウの存在を確認した面積は60万ムー(=400平方キロメートル)以上に及び、その数量は2019年同期の90倍に達しており、全国でツマグロクサヨトウを撲滅するために水際作戦を展開する必要がある面積は8000万ムー(=5万3333平方キロメートル)から1億ムー(=6万6667平方キロメートル)に達するものと想定できる。

一口に5万平方キロだの、6万平方キロだと言っても広さの感覚がつかめないと思うが、日本の面積は約38万平方キロメートルであり、関東地方(約3万2000平方キロメートル)と東海地方(約2万9000平方キロメートル)の面積を加えると約6万1000平方キロメートルになると言えば、おおよその広さが分かると思うが、これはすべて農地の面積である。

ツマグロクサヨトウは幼虫で冬を越し、春になると羽化して蛾の成虫となって移動を開始するが、その性質は多食性の害虫で、トウモロコシ、高粱、小麦、水稲、サトウキビなどを含む46科202種類の植物に寄生して生活するのだという。

ただし、ツマグロクサヨトウは進化の過程で、トウモロコシや高粱を主食とするトウモロコシ型と水稲や牧草を主食とする水稲型に分化しており、中国に侵入している主体はトウモロコシ型なのだという。

このように今年のツマグロクサヨトウが去年の90倍の数量に膨れ上がるとすれば、その被害は甚大かつ壊滅的なものとなることが予想される。

 中国のトウモロコシ作付け面積の50%以上がツマグロクサヨトウの脅威にさらされているので、ツマグロクサヨトウが中国のトウモロコシ生産に与える打撃は極めて大きいと考えられる。

国難その4・サバクトビバッタの来襲

2020年2月11日、国際連合食糧農業機関(FAO)は全世界に向けてサバクトビバッタの大量発生によってもたらされる災害に関する警報を発した。この警報を受けて、中国政府「国家林業・草原局」はサバクトビバッタ(中国語「砂漠蝗」)災害の予防・抑制に関する緊急通知を発令した。

(1)最近、サバクトビバッタ災害は東アフリカからインドやパキスタンまで蔓延しており、我が国はサバクトビバッタの侵入リスクに直面している。サバクトビバッタの我が国への侵入リスクに有効的に対処するために、サバクトビバッタおよびソウゲンバッタ(中国語「草原蝗」)の災害を予防・抑制する作業を着実に行わなければならない。

(2)バッタ(中国語「蝗虫」)は我が国の草原地帯に広範に分布しており、我が国で毎年発生するソウゲンバッタによる災害面積は平均1.5億ムー(=約10万平方キロメートル)であり、最高の年は3億ムー(=約20万平方キロメートル)であった。

(3)今回のアフリカを起源とするサバクトビバッタの災害は、その発生範囲が広く、危害や損失が甚大で、発展の速度が速いという特徴を持ち、1日で150キロメートルの距離を移動することができるという。サバクトビバッタによる災害は国際社会や多くのメディアによって注視されており、中国共産党中央委員会と中国政府国務院は国家の重大事としてサバクトビバッタの動向を重視している。

(4)FAOによれば、アフリカから始まったサバクトビバッタによる災害は初期段階で抑制できなかったことによって、2020年6月頃までにサバクトビバッタの集団を制御できない可能性があるが、そうなるとサバクトビバッタの個体数は現在の500倍まで膨れ上がる可能性があると予想されている

(5)気候条件にもよるが、今回発生したサバクトビバッタの集団は、パキスタンとインドからチベットへ直接侵入するルート、ビルマ経由で雲南省へ侵入するルート、カザフスタン経由で新疆ウイグル自治区へ侵入するルートという3ルートの可能性がある。従い、雲南省チベット自治区新疆ウイグル自治区などのインド、パキスタンビルマと隣接する地域は監視を強化し、重要な変化があれば、速やかに国家林業・草原局草原管理司や森林・草原病害虫予防ステーションに報告することが必要である。

昆虫専門家によれば、世界中にトビバッタは7つの亜種があり、中国でよく見るのは東アジアトビバッタ、アジアトビバッタ、チベットトビバッタの3種だが、現在インドとパキスタンを襲って災害を及ぼしているのはアフリカ起源のサバクトビバッタあるいは地中海トビバッタである。

歴史的に見るとサバクトビバッタ雲南省に危害を与えた記録はあるが、甚大な災害を与えたものではなかったという。

1平方キロメートルを覆い尽くすサバクトビバッタは1日で3万5000人の穀物を食べ尽くすと言われており、サバクトビバッタが中国に侵入したら中国の穀物生産量に大きな影響を与え、穀物不足による穀物価格の上昇や穀物輸入量の増大が中国国内に深刻なインフレを引き起こす可能性も高い

現在4000億匹のサバクトビバッタによる襲撃を受けているインドのラジャスタン州では大量の農作物がサバクトビバッタにより食い尽くされており、その被害は近隣地域へと領域を拡大している。インド学者の予測によれば、サバクトビバッタの災害によりインドの食糧生産は30~50%の減産を余儀なくされるという。

今後、サバクトビバッタが中国へ侵入するかどうかは分からない。しかし、中国政府は2月23日から3月5日までパキスタンへ予防作業チームを派遣してサバクトビバッタの動向を調査した程だから、サバクトビバッタの来襲に恐怖を覚えていることは間違いない。

 

さて、上記で中国が直面する4つの国難の概要を述べたが、それは将に文頭に述べた「禍不単行(災いは重なって来る)」という成語の正しさを証明しているかのように思える。

したたかな中国という国家はこれら4つの国難を克服するものと思うが、それを適切に解決するには国家指導部の卓越した能力が必要とされるはずであるから、我々外国人は彼らのお手並み拝見と行こう。